現代の危機と哲学
- 作者: 森一郎
- 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 単行本
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2001年の米国テロ事件と、その十年後の東日本大震災という出来事が、問いの出発点となる。現実感を欠いた恐るべき光景を目撃したわれわれは、いったいこれは何か、と問わずにいられなくなる。現代における哲学の始まりは、驚嘆(タウマゼイン)というより、戦慄である。
【キーワード】
9・11テロ、3・11大震災、原発事故、哲学の始まり
アーレント「近年のヨーロッパ哲学思想における政治への関心」(1954)
https://www.msz.co.jp/book/detail/07013.html
https://www.amazon.co.jp/dp/B00YAZ8Z26/
第2回 「神は死んだ」その1
ニーチェ『愉しい学問』(1882, 1887 増補第2版)の108番にお目見えし、125番で「狂人」の口を通して語られる「神の死」とは、いかなる事態を意味する言葉なのか。テクストを読み味わいつつ考えてゆく。それは、既成宗教の凋落を意味する以上に、伝統的世界観の瓦解を指すものであった。
【キーワード】
『愉しい学問』、「新たな戦い」、「狂人」、科学革命
https://www.amazon.co.jp/dp/4062924064/
第3回 「神は死んだ」その2
ニーチェは『ツァラトゥストラはこう言った』(1883-85)でも、主人公に「神は死んだ」と語らせている。とくに第4部では、神は同情ゆえに死んだ、とされる。だが、同情道徳を生み出した近代という大枠そのものこそ、「神の死」によってテーマとされた問題現象にほかならない。
【キーワード】
ツァラトゥストラ、「最も醜い人間」、近代最大の出来事
https://www.amazon.co.jp/dp/4309464122/
第4回 学問の危機と哲学
『愉しい学問』の344番では、「真理への意志」が自己批判され、真理という概念自体にひそむ信念がえぐり返される。19世紀末のニーチェに続いて、20世紀に入って学問の意味への問いを鋭敏に察知した学者が、ヴェーバーとフッサールであった。
【キーワード】
真理への意志、生と学問、ヴェーバー、フッサール
- 作者: 秋富克哉,安部浩,古荘真敬,森一郎,日下部吉信,小島和男,坂下浩司,片柳榮一,山本芳久,上田閑照,中島隆博,大峯顯,茂牧人,小泉義之,酒井潔,宮?裕助,森哲郎,大橋良介,美濃部仁,竹内綱史,的場哲朗,戸島貴代志,吉川孝,榊原哲也,渡辺和典,庄子綾,熊野純彦,立木康介,芦名定道,中山剛史,佐々木一也,小松恵一,本郷均,陶久明日香,柿木伸之,入谷秀一,杉村靖彦,小手川正二郎,廣瀬浩司,増田靖彦,加藤恵介,三松幸雄,川瀬雅也,野間俊一,荒畑靖宏,乘立雄輝,松丸壽雄,佐野之人,松本直樹,齋藤元紀
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2016/04/29
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現代思想 2018年2月臨時増刊号 総特集=ハイデガー ―黒ノート・存在と時間・技術への問い―
- 作者: マルティン・ハイデガー,高田珠樹,小泉義之,森一郎,轟孝夫,グレアム・ハーマン,アラン・バディウ,村井則夫,岡田温司,藤原辰史,宮崎裕助
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2018/01/27
- メディア: ムック
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実存に着目したヤスパースに触発され、学問の危機を打開する独自の存在論へと踏み出したのが、ハイデガーであった。その主著の核心をなす「死への存在」について学ぶ。死を可能性として持ちこたえようとする思索は、有限性にもとづく時間論を稔らせる。
【キーワード】
実存、限界状況、可能性としての死、存在と時間
第6回 死への共同存在
「死すべき者たち」という古代的人間観に近しいハイデガーの「死への存在」は、複数性において考えられた場合、ホッブズが『リヴァイアサン』で展開した自然状態=戦争状態論に、思いがけず接近する。万人の死にやすさの平等が、テロリストの自滅戦法を生む。
【キーワード】
可死性、複数性、ホッブズ、殺されやすさの平等
第7回 大学の危機と哲学
ナチ政権が成立した1933年、ハイデガーが行なったフライブルク大学学長就任演説『ドイツの大学の自己主張』は、彼なりの大学改革案であった。現代の大学改革問題にも通ずるこの事例を振り返り、学問と政治ののっぴきならない間柄について考える。
【キーワード】
『ドイツの大学の自己主張』、民族と大学、テオーリア
第8回 理論と実践もしくは観照と行為
ハイデガーは、理論と実践の分離の起源を尋ねて、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「ソフィア」と「フロネーシス」の区別に行き着き、この理論知と実践知の理想の合体を、実存の本来性として見出そうとした。それは、哲学と政治の合体を意味した。
【キーワード】
アリストテレス、プラクシスとフロネーシス、哲人王国家論
第9回 労働のゆくえ
ハイデガーは学長時代、大学は「勤労奉仕」の場たるべしと訓諭したのみならず、労働に人間のあり方の中心を見てとる存在論を急ごしらえした。だが、第二次世界大戦後の技術論では、万人を労働に徴用してやまない「総かり立て体制」のからくりをあばき出した。
【キーワード】
勤労奉仕、労働の擬似存在論、徴用、総かり立て体制
ハイデガーに学んだアーレントは、全体主義研究を発展させて、人間の活動をひとしなみに労働と見立てる近代の根本動向にメスを入れた。『活動的生』の労働論は、マルクス批判であるとともに、「労働する動物の勝利」の果ての時代に対する省察でもある。
【キーワード】
人間の条件、活動的生、労働の不毛さと多産性
https://www.msz.co.jp/book/detail/07880.html
第11回 区別することの意味
『活動的生』の「序論」は、人工衛星打ち上げの出来事から説き起こし、生命工学の野望、科学の危機とオートメーションの脅威に光を当てる。ここに生ずる「われわれは何をしているのか」という問いが、労働、制作、行為という活動的生の3区分へと赴かせる。
【キーワード】
労働と消費、制作と使用、自然と世界との根本分節
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/2018/kyouyou/C/ningen/index.html
https://www.wakaba.ouj.ac.jp/kyoumu/syllabus/PU02060200211/initialize.do