友愛の政治

昨日、民主党の新代表に鳩山由紀夫氏が選出されたことを承けて、今朝の新聞各紙には様々な論説が載っていました。そのうち、ほほぅ、と感心させられたのが、毎日新聞のコラム「余録」です。
冒頭、「民主党大会で選出された鳩山党首はあいさつした。「他人の人格の尊厳を尊重し、相互に友愛の念を抱くようにならなければ民主政治が繁栄するはずはない」。時は1954年11月、その党の正式名称は日本民主党、党首とは鳩山一郎総裁のことだ」とあって、ここで、へぇー、となります。確か、昨日の代表選挙前のスピーチでも孫の由紀夫氏は自分が言う「友愛の政治」とはどういうものか述べていたはずですが、元々これがお爺さんも使った台詞であったとは驚きです。
続いて、お爺さんの一郎氏曰く「だが吉田(茂)君は他人の人格の尊厳を尊重したことがない。反対党員の質問に対し親切に答弁したことがない。独裁的独善的政府を倒し、民主政府の建設を希望する。」鳩山一郎が掲げた「友愛」は、そのまま自由党の吉田政権への批判だった。占領期からの長期政権の秘密主義や側近政治への不満が積もるなか、友愛精神と開放政治の訴えは国民の間で「鳩山ブーム」を引き起こし、政権交代を実現した」とあります。
現在の自民党総裁吉田茂の孫の麻生太郎氏ですので、このコラムは「時計の針を半世紀以上戻したような因縁のリーダー対決は、21世紀の日本にふさわしい選択肢を示せるか。古いドラマの焼き直しを見せられるだけなら、有権者はたまらない」で結ばれていますが、実に良くできています。
下の写真の左が吉田茂氏、右が鳩山一郎氏です。

余録:鳩山新代表選出

民主党大会で選出された鳩山党首はあいさつした。「他人の人格の尊厳を尊重し、相互に友愛の念を抱くようにならなければ民主政治が繁栄するはずはない」。時は1954年11月、その党の正式名称は日本民主党、党首とは鳩山一郎総裁のことだ▲今の民主党鳩山由紀夫新代表の祖父である。演説はこう続いた。「だが吉田(茂)君は他人の人格の尊厳を尊重したことがない。反対党員の質問に対し親切に答弁したことがない。独裁的独善的政府を倒し、民主政府の建設を希望する」▲鳩山一郎が掲げた「友愛」は、そのまま自由党の吉田政権への批判だった。占領期からの長期政権の秘密主義や側近政治への不満が積もるなか、友愛精神と開放政治の訴えは国民の間で「鳩山ブーム」を引き起こし、政権交代を実現した▲祖父と同じく「友愛」を掲げた鳩山由紀夫新代表だ。では吉田茂の孫である麻生太郎首相率いる自民党との対決で「鳩山ブーム」による政権交代を実現できるのか。世論調査の人気で上回る岡田克也氏を29票差で破っての新代表選出だった▲もっとも国会議員だけで急がれた新代表選出の背景には、小沢一郎前代表の影響力が取りざたされる。そのため一部からは「小沢院政か」との疑念の声も投げかけられる新代表だ。ここはまず透明で開放的なリーダーシップにより「友愛」の実を示さねば「ブーム」再来は難しい▲「日本の大掃除をしたい」とは鳩山新代表のあいさつだ。時計の針を半世紀以上戻したような因縁のリーダー対決は、21世紀の日本にふさわしい選択肢を示せるか。古いドラマの焼き直しを見せられるだけなら、有権者はたまらない。

http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20090517k0000m070107000c.html

関連して、岐阜新聞山口二郎さんがなかなかおもしろい鳩山評を書かれていたのが印象に残りました。
以前、山口さんが「鳩山さんは子供の頃にケンカをしたことがありますか」と問うたところ「ありません」という返事であった、とのこと。こういう育ちの良い(友愛的?)性格で果たして自民党を追い込むことができるのだろうか、とありました。
同様に、かつて、全国町村会の会合に来賓として自民党の小泉総裁とともに当時の鳩山民主党代表も招かれた折に、壇上で小泉総理大臣万歳、となったところ、何と鳩山代表も一緒になって万歳を唱和していた、という記事が他紙にありましたが、さてさて、来る総選挙の結果、民主党の政権奪取はめでたく成就するのでしょうか?
私は、今回の代表選の有様を見ていて、山口二郎さんと同じく、政権交代に向けてのインパクト、という意味では確かに岡田克也氏の方があったと思うし、その意味で、かつて小泉さんが登場した時のムード(前回は「改革」、今回は「政権交代」)と比べるとかなりテンションが低く、この鳩山代表ではどうも新鮮味がないのでは、と思います。かりに民主党政権になったとして余り代わり映えがしないのではないでしょうか。いずれにしても総選挙の結果が楽しみです。