Epiphany


今年もBBCラジオ番組を1週遅れで聴くのが休日の楽しみになりそうです。
今日聴いた Words and Music のテーマは Epiphany
http://www.bbc.co.uk/programmes/b018sqph
このコトバ、最近オバマ大統領夫人に係るニュースで聞き覚えがあります。確かABCニュースシャワーでは「開眼」と訳していましたね。

The Obamas

The Obamas

番組の最後に流れたのはヤナーチェックの「シンフォニエッタ」でした。
Leos Janacek — Sinfonietta
Performer: Vienna Philharmonic, Sir Charles Mackerras
DECCA 4101382, Tr5

http://www.discogs.com/Leo%C5%A1-Jan%C3%A1%C4%8Dek-Wiener-Philharmoniker-Sir-Charles-Mackerras-Sinfonietta-Taras-Bulba/release/2691519
ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」!
これぞ村上春樹1Q84』第1章の冒頭、青豆さんが個人タクシーの車内で聴いていて、これから読者を不思議な世界に誘うBGM(村上さんは背景音楽といってました)。なるほどそれが「開眼 Epiphany 」ですか。

 青豆は渋滞に巻き込まれたタクシーの中で、ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」の冒頭を耳にしたときに経験した、あの不思議な感覚を思い出した。それは身体のねじれのような感覚だった。身体の組成が、雑巾みたいに絞り上げられていく感触がそこにはあった。そしてあの運転手が私に、首都高速道路に非常階段が存在していることを教えてくれ、私はハイヒールを脱いでその危なっかしい階段を降りた。その階段を裸足で、強い風に吹かれながら降りていくあいだもずっと、「シンフォニエッタ」の冒頭のファンファーレは私の耳の中で断続的に鳴り響いていた。ひょっとしたらあれが始まりだったのかもしれない、と青豆は思った。

 レオシュ・ヤナーチェック1854年モラヴィアの村に生まれ、1928年に死んだ。本には晩年の顔写真が載っていた。禿げてはおらず、頭は元気のいい野草のような白髪に覆われている。頭のかたちまではわからない。「シンフォニエッタ」は1926年に作曲されている。ヤナーチェックは愛のない不幸な結婚生活を送っていたが、1917年、63歳のときに人妻のカミラと出会って恋に落ちた。既婚者同士の熟年愛である。一時期スランプに悩んでいたヤナーチェックは、このカミラとの出会いを契機として、旺盛な創作欲を取り戻す。そして晩年の傑作が次々に世に問われることになる。
 ある日、彼女と二人で公園を散歩しているときに、野外音楽堂で演奏会が開かれているのを見かけ、立ち止まってその演奏を聴いていた。そのときにヤナーチェックは唐突な幸福感を全身に感じて、この「シンフォニエッタ」の曲想を得た。そのとき自分の頭の中で何かがはじけたような感覚があり、鮮やかな恍惚感に包まれたと彼は述懐している。ヤナーチェックは当時たまたま大きな体育大会のためのファンファーレの作曲を依頼されており、そのファンファーレのモチーフと、公園で得た「曲想」がひとつになって「シンフォニエッタ」という作品が生まれた。「小交響曲」という名前がついているが、構成はあくまで非伝統的なものであり、金管楽器による輝かしい祝祭的なファンファーレと、中欧的なしっとりとした弦楽合奏が組み合わされ、独自の雰囲気を作りあげている―と解説にはあった。


1Q84
http://1q84.shinchosha.co.jp/
http://1q84.shinchosha.co.jp/news/2012_01/05.html