永井荷風作品集

全20回
朗読:吉見一豊(円企画)
テキスト:「濹東綺譚」(岩波文庫 2010年)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

「雨瀟瀟・雪解−ほか七篇」(岩波文庫 1987年)「雪解」「勲章」
雨瀟瀟・雪解 他七篇 (岩波文庫)

雨瀟瀟・雪解 他七篇 (岩波文庫)

荷風随筆集(下)」(岩波文庫 2013年)「雪の日」
荷風随筆集 下 (岩波文庫 緑 41-8)

荷風随筆集 下 (岩波文庫 緑 41-8)

日本が泥沼の戦争にはまりこんでいった時代。永井荷風は、そうした世の流れに逆らうかの如く、下町の女性たちとの交遊を続け、それをもとにした耽美小説を発表していく。今回朗読するのは、永井荷風が1937年(昭和12)に「東京大阪朝日新聞」に連載した「濹東綺譚」。物語は還暦に近い小説家「わたくし」が、東京・玉の井の色町で若い娼婦「お雪」に出会う。「わたくし」は、純な「お雪」に心を癒されてゆく・・・。日本耽美派文学の代表・荷風の「濹東綺譚」を読む。永井荷風は1959年(昭和34)没。
永井荷風(本名・壮吉)は、1879年(明治12)、東京・小石川区金富町(現文京区春日)に生まれた。父はボストン大学等に留学経験を持つエリート官僚、母は儒学者の娘であった。恵まれた家庭に育った荷風は、高等師範附属中学校時代から「水滸伝」「八犬伝」などを読みふけり、文学活動に入っていく。 1898年、広津柳浪に入門。その後、父親の意向を受ける形でアメリカの銀行に勤務し、さらにフランスを巡る旅に。文学はもとよりクラシック音楽にも興味を示す。帰国後、この間の交遊・見聞をもとに作品を発表。「あめりか物語」に続いて書いた「ふらんす物語」「陥落」は時代に合わないとして発売禁止処分になる。しかし荷風の筆の勢いは衰えず、「腕くらべ」「紫陽花」「つゆのあとさき」と世に出す。
森鴎外らの推薦で慶応義塾大学文学部教授になるも大学と意見が対立し、教職を辞任し自由な暮らしに。 永井荷風を際立たせるのは、戦争に向かう時代の潮流に抗するかのような反骨の創作活動。銀座のカフェーや浅草・玉の井など色町の女性との交遊をもとにした耽美小説を次々に発表する。
今回朗読する「濹東綺譚」は、永井荷風代表作の一つで、1937年(昭和12)、「東京大阪朝日新聞」に連載された。それは日本を戦争の泥沼に誘い込んだ盧溝橋事件と同じ年であった。

http://www.nhk.or.jp/r2bunka/roudoku/1407.html