これを読んで、まずは『たった一人の反乱』からで『笹まくら』はその次だな、と思いました。
ぼくの小説は前の長編に対する自己批評から始まる。『たった一人の反乱』の6年前に発表した長編『笹まくら』は、徴兵忌避者だった大学職員による逃亡時代の回想で、書いていてつらくてしかたなかった。こういう悲しい小説は当分書くのはよそう、もっと楽しい小説を書きたいと思っていた。
もう少し言えば、日本の純文学の世界の書き方のおきてとしてある「純文学的戒律」、大まじめで、深刻ぶった、俗でないもの、そうでなければ純文学ではないという考えが嫌だった。