円高をどう考えるか

以下、榊原英資元財務官の発言です。なるほど内需に期待できない日本経済を牽引する輸出産業には円高を何とか持ちこたえてもらうことにして、強い円は日本の国益、ということですか。

円、9月末までに最高値も = 世界同時不況を警戒 ― 榊原元財務官

榊原英資青山学院大学教授(元財務官)は17日、インタビューに応じ、一時15年ぶりの高値となった円相場について「早ければ9月末までに、1995年4月に付けた1ドル = 79円75銭の史上最高値を更新する可能性が高い」との見通しを明らかにした。経済の先行きに関しては「今年から来年にかけ世界同時不況に入る可能性がかなりある」と述べ、財政政策による景気対策が必要との認識を示した。

主なやりとりは次の通り。
― 世界経済の先行きは。
今年から来年にかけ、世界同時不況に入る可能性がかなりある。中国経済は輸出が国内総生産(GDP)の40%くらいあり、欧米経済が落ち込めば必ず悪くなる。日本も円高が進んで株安になれば、それを契機に年末から来年にかけ悪化していく。
円高の背景と見通しは。
米国の景気は二番底を付ける可能性があり、低金利がしばらく続くとの観測からドル安となっている。円相場は年末か、早ければ9月末までに史上最高値を更新する可能性が高い。
― 政府・日銀の対応策は。
今の米国はドル安で輸出が伸びることを歓迎している。米国が望まない中で日本単独の為替介入は難しいし、効果がない。日銀が追加金融緩和をしても、米国がさらに金融緩和を行う可能性があり、円高に対する有効な手段はない。
長期金利1%割れは国債バブルか。
バブルではないのではないか。株式から債券への世界的なお金のシフトであり、インフレ経済からデフレ経済への構造転換だ。
― 日本経済への処方せんは。
財政政策を打たなければいけない。極端に財政赤字を気にして国債発行を制限するのは駄目だ。家計の金融資産残高は大きく、金利も1%を切っており、5〜6年は大量発行の余地がある。
円高をどう考えるか。
急激な円高にはいろいろ問題があるが、緩やかな円高なら国の力が強くなる。海外の企業を買収してもいいし、資源獲得を考えてもいい。強い円は日本の国益だと発想を転換すべきだ。