功利主義と分析哲学

功利主義と分析哲学―経験論哲学入門 (放送大学教材)

功利主義と分析哲学―経験論哲学入門 (放送大学教材)

黒田亘さんの名著『行為と規範』を再読してみて、功利主義についてもう少し基礎から学べる適当な日本語の本はないかなぁと思っていたところ、先月25日、たまたま朝刊のテレビ、ラジオ欄を見ていて、その日の夜9時30分から放送大学ラジオ講座で表題の講義があることを知り、あまり関係なさそうな、その組み合わせからして興味を持ちました。昨日、仕事帰りに書店に立ち寄り、中味をパラパラ眺めてみて少し高いなと思いながらも、副題「経験論哲学入門」とあるのに引かれ本テキストを購入した次第です。
(他に火曜日に放送がある齋藤純一さんの「公共哲学」にも興味を持ちましたが、余り欲張ってはいけませんね。)
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H22/kyouyou/B/ningen/1551914.html
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H22/kyouyou/B/ningen/pdf/1551914.pdf
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H22/daigakuin/B/syakai/8930562.html
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H22/daigakuin/B/syakai/pdf/8930562.pdf
冒頭、なぜ英国で経験論哲学が発祥したのか、について、一ノ瀬先生の見立ては以下のとおりでした(pp.21-22)。なるほど。

 おそらく、イギリス人のある種の地域性や国民性、すなわち、いきなり理想や理念を掲げるのではなく、現実の生活の中でこつこつ努力して少しずつ新しいものを見いだしていくといった実証性や実際性を尊ぶ地域性・国民性が、何らかかかわっていたのかもしれない。市民革命や産業革命が世界で最初に達成された事実から、そのことがうかがわれるかもしれない。
 実際、イギリス経験論の芽は、かなり昔に遡ることが出来る点からして、何かその風土や地域性のようなものがかかわっていたという実感は増す。中世時代の13世紀に活躍したオクスフォード学派と呼ばれる哲学者たち(ロバート・グローステスト Robert Grosseteste、ロジャー・ベーコン Roger Bacon)は、当時のアリストテレス一辺倒のスコラ哲学に批判的であり、数学や自然科学を重視し、経験を重んじた。
               参考文献 マックス・ヤンマー『力の概念』第4章

講師の一ノ瀬正樹さん。どうも黒田先生のお弟子筋に当たる方のようです。この本の他にも既に単著がいろいろとあるようですね。
しかし、このラジオ講座、なかなかおもしろそうなので聴講してみたいのですが、今の家では残念ながらCS放送を見ることができません(よってCSラジオも聴けません。もっとも放送大学では来年10月からCSでの放送は止めてBSデジタル放送に切り替わるようですが)。
http://www.ouj.ac.jp/hp/o_itiran/BSkaishi/index.html
テキストの「まえがき」によれば、ラジオ講座の吹き込みを終えてからこのテキストを執筆されたようです(これも黒田先生の本と同じです)ので、放送を聴けない分、本書を教科書としてこれからしっかり読もうと思っています。
教科書といえば、最近、こんな風に学習プランを考えているところです。

1時限目(早朝 3:00〜5:00、出勤前)政治制度入門。
テキストは金井利之教授の本書に続いて大山、曽我・待鳥のテキストを使用予定。
功利主義と分析哲学―経験論哲学入門 (放送大学教材)

功利主義と分析哲学―経験論哲学入門 (放送大学教材)

2時限目(就寝前、〜22:00)哲学入門。
本書に加えて、黒田、ミル、セン、バーリンのテキストを使用予定。
このように、毎日、時間割を決めて、少しずつテキストを読み込み、このHPでノートとして公開していければ、独り学習の張り合いになるかもしれません。

(後記 2016.8.13)
とうとう本書も文庫化されたようですね、トホホ、また買うことになるのでしょうか。

英米哲学史講義 (ちくま学芸文庫)

英米哲学史講義 (ちくま学芸文庫)

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480097392/