大阪政治決戦

明日の大阪市長、府知事のダブル選挙投票は全国がその結果を注視する地方選挙になりました。
金井利之先生がおっしゃるように大阪「都」がどうなろうとその他の地方に住む者にとっては痛くも痒くもありません。
http://d.hatena.ne.jp/yasu-san/20101013
でも、砂原庸介先生が以下でおっしゃっているように新たな地方制度の萌芽となる興味深い実験ができるよう市政、府政が同一方向を向いてくれるといいな、と祈っております。
そういう意味では道府県政令市の首長が同じ地方政党所属、という状態は新しい地方自治のあり方を示すことになるのでしょう。
橋下さんが府知事に当選した当時の2008年3月1日、私はその前日の大阪府議会における知事の所信表明を聞いて、これは「新しい地方のリーダーか」と mixi 日記に記したものです。
その年の6月5日に発表された予算案の内容には、よくぞここまで見直せたものだと感心させられました。

大阪府橋下徹知事は5日、1100億円の財政再建案を発表した。今年度予算で事業費と人件費計665億円の歳出削減に踏み切り、財源不足の85億円は府債発行で補う計画だ。府議会各会派は歳出削減の圧縮を求めており、予算案を審議する7月臨時議会に向け、内容の修正を求めていく構えだ。
9年連続の赤字決算という全国最悪レベルの財政構造からの脱却をめざす橋下知事は、今年度の財源不足額1080億円を補う収支改善目標を1100億円に設定。一般施策経費と建設事業で320億円、人件費で345億円の計665億円を削減。府有施設の売却などで435億円の歳入を確保するとした。
一般施策の削減では、主に他府県と比べた助成水準の高さや市町村や民間との適切な役割分担の観点から事業を精査。私学助成に切り込んだほか、建設事業も原則2割削減の目標を打ち出した。職員の人件費は基本給を3年間カットし、削減幅は知事30%、管理職14〜12%、非管理職10〜4%としている。都道府県で初めて退職手当も部長級以下で5%削る。基本給は都道府県で最下位になる見込みだ。
大幅な歳出削減にもかかわらず85億円の財源不足が生じるため、退職手当債85億円も発行する。ただ、景気減速のあおりで今年度の法人2税は見込みより300億円以上下回る可能性があり、今後も厳しい財政運営を迫られるのは必至だ。

その予算案を議論した7月臨時議会の模様は以下のとおりですが、知事のタフさは若いとはいえ感動すら覚えるものでした。

大阪府予算案、削減幅18億円縮小 知事、徹夜で論戦
大阪府橋下徹知事は19日未明、7月臨時府議会に提出している08年度一般会計予算案の修正内容を明らかにした。主要会派が見直しを求めていた人件費は、一部を除く一般職の削減率を一律0.5ポイント緩和。私学助成では幼稚園への補助金の削減率5%を2.5%に修正し、歳出削減額は計18億円縮小された。与党の自民、公明両会派は修正内容を基本的に評価しており、23日の本会議で修正予算案が成立する見通しとなった。
橋下知事が18日から徹夜で審議してきた総務常任委員会で表明。22日に議案訂正の手続きをとり、閉会日の23日の委員会と本会議で議決する。
人件費削減は特別職、指定職、部長級は原案通り。その他の一般職の基本給の削減率4〜12%を一律0.5ポイントずつ引き下げ、3.5〜11.5%に修正。非常勤職員の報酬も削減率を縮小。345億円を見込んだ削減効果額が329億4千万円に減る。一方、私学助成は、幼稚園運営経費の補助金の削減率を5%から2.5%に縮小。4億4千万円を見込んだ削減効果額は2億1千万円に減る。
歳出増となる計18億円の財源については、橋下知事が府債(退職手当債)の追加発行を認めない考えを示したことから、財政調整基金3億6千万円を繰り入れ、残りの14億4千万円は歳入不足として来年度予算で補う。このため、原案で35億6千万円だった赤字は50億円になる。
橋下知事は委員会終了後、修正理由について「議会の意見を踏まえながらバランスをとった。私の財政再建の思いと、議会の意思の調整としか言いようがない。僕の意思、行政の意思だけでは進まない」と報道陣に説明した。
このほか、来年度予算から削減予定の私立高校の授業料軽減助成は、年収430万円層までは現行水準を維持することにし、所得制限を540万円から680万円に引き上げるなどの見直しを実施。府立女性総合センター(ドーンセンター)を運営する男女共同参画推進財団は、自立化の時期を09年度から10年度に1年延期する。


■「議論しつくせた」知事に満足感
「議会制民主主義を実体験した。厳しいながらもやりがいのあるプロセスでした」。橋下徹知事は徹夜の委員会質疑の最後、謝意を表した。日付は変わり午前3時40分を過ぎていた。その後、休憩をはさんで午前4時30分に再開した委員会で、「熟慮に熟慮を重ね、修正させていただく」と修正内容を説明した。
未明の知事答弁は、横山ノック知事時代の97年3月に午前2時過ぎまで続いた委員会以来。最初の委員会は18日午前10時開始。18時間にわたり40人を超える委員と論戦を戦わせ、報道陣には「もう十分議論をしつくせたと思ってます」と満足顔を見せた。
削減幅18億円の縮小は1100億円の財政再建目標額の1.6%という微修正で、議会側の修正要求には遠く及ばない。だが、原案修正で主要会派の面目も保たれ、早速評価の声もあがった。
最大会派の自民府議団の浅田均幹事長は「我が方が求めた要望に限りなく近い」。人件費と私学助成の削減見直しを強く求めていた与党・公明府議団の光沢忍幹事長も「議会の意見をくみ上げて組み立てられた修正案と評価する」と話した。
一方、野党の民主は修正案を受けて議員団総会を開いたものの、意見がまとまらなかった。西脇邦雄幹事長は、修正案を出したことは「評価している」としつつ、内容については「微妙」と明言を避けた。共産府議団の宮原威団長は「修正は府民の世論の反映」としたが、「修正幅が小さすぎる」として、予算案に反対する意向を示した。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=730938768&owner_id=9238594
橋下徹研究
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/110928/waf11092816300051-n1.htm
今回のダブル選の意義についての砂原先生の発言は以下のとおり。

「大阪の方向性定める選挙」 砂原庸介大阪市立大准教授


 大阪都構想では広域行政を都が、基礎自治を特別自治区が担う役割分担をするとしても、限られた財源では都心に集中投資するか、幅広く分散投資するかの選択は必要になる。この方向性が示されれば都構想は重要な争点になり得ただろうが、現時点では「変えるか現状維持か」の二択でしかなく、変えた先の方向も分からないため、有権者には選びづらい。一方、橋下氏や維新を批判する人たちも対立軸を明確にしてはおらず、結局何をしたいのかよくわからない。
 各候補は大阪を変えなければならないと公約を掲げているが、現状は「維新か反維新か」の選択となっている。だが、ダブル選の結果にねじれがなければ、当選者たちはもう府と市の「不幸せ」のせいにはできなくなる。その意味では、大阪の方向性を定めることになる注目の選挙だ。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/111110/waf11111010240009-n1.htm

大阪都構想のふたつの哲学
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20111103/p1
体制維新
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20111106/p1
都制・特別市制−リバイバル
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20111113/p1