Stiglitz Bares Billionaires’ Secret Weapon

The Price of Inequality

The Price of Inequality

http://books.wwnorton.com/books/detail.aspx?ID=4294967848
以下、抜粋ながら本日、日本語で本書の書評を読むことができました。
目次はここで確認できます。
http://www.amazon.com/The-Price-Inequality-Divided-Endangers/dp/0393088693/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1339820731&sr=1-1
なお、原文はこちら。
http://www.bloomberg.com/news/2012-06-10/stiglitz-bares-billionaires-secret-weapon-government-books.html

【書評】スティグリッツ教授が暴く米億万長者の「秘密兵器」 Stiglitz Bares Billionaires’ Secret Weapon
ブリュッセル Jim Pressley 6月11日(ブルームバーグ):


大衆主義を唱えるポピュリストたちの「われわれは99%を占める」というスローガンを打破するのは難しい。ただ、この大衆行動はこれまで首尾一貫したメッセージと議題を欠いていた。これからは違う。

ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学教授のジョゼフ・スティグリッツ氏は鉄鋼の街、インディアナ州ゲーリーで育った。刺激的な新著「The Price of Inequality」で取り上げたこのテーマについて数十年にわたって研究を続けている。

教授の結論はこうだ。米国人の1%が所得の5分の1を稼ぎ、富の3分の1以上を支配すると、経済成長や民主主義、上流階級そのものさえもが支障を来す事態となる。まさに今日の状況が示すように−。

ジャーナリストのロバート・フランク氏が「リッチスタン」と呼ぶ居住者についてスティグリッツ教授は「富裕層は世間から隔絶されて存在しているわけではない。彼らは地位を維持し、資産から所得を生み出すために、機能する社会を必要としている」と指摘する。

米政府は不平等を減らすどころか30年かけてその逆の状況を助長してきたと教授は喝破する。市場をゆがめ、資金を社会の底辺と中流から上流へと移行させたのだと。この見方によれば、政府こそが億万長者たちにとっての秘密兵器なのである。

スティグリッツ教授はマサチューセッツ工科大(MIT)で1960年代に博士論文を執筆して以降、不平等がいかに経済行動を形成するかについて探究を続けている。この著書で的確かつ情熱的に提示されている研究成果は、行動経済学ゲーム理論、非対称情報の経済学などに基づいている。

 市場の信仰

市場は常に効率的に機能するという「宗教的信仰」や政府が常に非効率的であるとの推論に対して教授は容赦ない姿勢を示す。これら2つのバランスを取る必要性を訴えながら、哲学的問い掛けについて議論を広げようとしている。その問い掛けとは、米国社会には不公平がはびこり、「チャンスにあふれる国」という言葉は神話と化してしまったのではないかというものだ。

不平等はここ30年間拡大し、貧困層はさらに貧しく、中流階級は空洞化している。一方、米国の富は1%の人々の手の中に集中していると、スティグリッツ氏は指摘する。前回、富がこれほどまでに集中していた時代は大恐慌の直前だった。

これにより、消費は抑制されてリセッション(景気後退)が長引いていると指摘。結局、この「1%クラブ」は所得の15−25%を貯蓄に回しているため、需要が減退して失業が増加すると教授は説明する。

 景気刺激策

英経済学者ジョン・メイナード・ケインズの時代から、政府は公共あるいは民間投資の拡大によって需要の不足を補おうとしてきた。スティグリッツ教授によると、1%の人々が政府支出を抑制しようと躍起になっているため、景気刺激の負担は減税や米連邦準備制度理事会FRB)の低金利政策につながっていった。

その破滅的な結果が住宅市場のバブルだった。FRBグリーンスパン前議長は市場が完全に効率的であると信じていたためにバブルを予測できなかった(あるいは予測しようとしなかった)。バブル崩壊から約5年を経ても景気低迷は続いている。

教授は厳しい経済状況の全容に対して真っすぐに向き合っている。米国人の6人に1人は常勤の仕事を見つけることができない。数百万世帯が持ち家をなくした。中高年層は早期退職に直面。あまりにも多くの大卒者が就職先を見つけられない上に数万ドルもの学生ローンを背負っている。

 最も不平等な国

先進国の中で、米国は最も不平等な国だと、教授は主張する。悲惨な状況は偶然生まれたわけではない。市場の力が働いたわけだが、政策がこの力を形成した。ウォール街の銀行が連邦政府お墨付きの預金でギャンブルをすることが許され、賭け金が吹き飛べば救済される状況を見れば、それは誰の目にも明らかなはずだ。

スティグリッツ教授によれば、「われわれはリバタリアン(自由論者)が提唱するミニマリスト(最小限主義者)の国家を作り上げているのではない」。われわれが作り出しているのは、弱体化し過ぎてインフラや教育などの公共財を改善できない一方で、富裕層に惜しみなく富を与える強さを持った国家である。つまり「1%の、1%のための、1%による」政府なのだと−。 

プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽部門で記事を執筆しています。この書評の内容は同氏自身の見解です)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5HPG16K50Y401.html

朝日新聞書評 世界の99%を貧困にする経済 [著]ジョセフ・E・スティグリッツ
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012091000008.html