地方政治

地方政府の民主主義 -- 財政資源の制約と地方政府の政策選択

地方政府の民主主義 -- 財政資源の制約と地方政府の政策選択

岡本全勝さんのHPにて大阪市立大学の砂原先生が単著を出版されたことを知りました。

 砂原君は、私が10年前に東京大学大学院に客員教授として出講していた時に、塾頭として授業を取り仕切ってくれました。とても優秀な院生で、教授である私より、彼の方がはるかに物事に詳しく、教えられることが多かったです。
 もちろん、地方行政や国家行政の現場経験は、私の方が詳しく、その土俵で勝負していました(笑い)。もっとも、実務家教員である私に求められていたのは、本に書いてある理論ではなく、現場経験でしたから、それは間違っていなかったのですが。
 講義を始めてしばらくして、学生の反応を確かめるため、「私の講義は難しいですか」と尋ねたら、「いいえ、どんどん難しくしてください。ついて行けない時は、言います。また、本に書いてあることは、『この本を読め』と指示してくだされば読みますから、本に書いてないことを教えてください」という趣旨の返事が返ってきたことを、覚えています。
 社会学を専攻するものだと思っていたら、行政学しかも地方自治を専門に選びました。それについては、私も責任の一端があります。この本のあとがきに、少し触れられているので、お読み下さい。
 う〜ん、責任重大ですね。さらに研究を深められ、大成されることを期待しています。

http://homepage3.nifty.com/zenshow/tihougyousei/siryou/page479.html

http://homepage3.nifty.com/zenshow/
http://d.hatena.ne.jp/nozomimatsui/20110412
砂原さんについてはそのブログで2月6日のトリプル選挙(名古屋市長と愛知県知事のダブル選挙と名古屋市議会の解散を問う住民投票)の論点について整理されていたり、大阪都中京都についての報道を分析されていたりしていたので、この書名を見て、やはり、という感を強くしました。
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20110207
http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20101207/p1
それにしても大阪府橋下知事名古屋市の河村市長の地方議会との対立や発信力のせいなのか、最近は二元代表制の地方政治がブームなのでしょう。少し前にはこんな本も出ておりパラパラ眺めたことを覚えております。

日本の地方政治―二元代表制政府の政策選択―

日本の地方政治―二元代表制政府の政策選択―

砂原先生自身の本書についての紹介文は次のとおり。

 内容は,付けていただいたオビのとおりで,「首長と地方議会からなる二元代表制の下で地方政府の民主主義は,どのように機能しているか」ということで,「予算配分,公共事業の見直し,新規課税の導入などの検討を通し地方政府の中で繰り広げられる首長と地方議会の政治的競争を分析する」ものになっています。
(どうでもいいですが,僕にまとめさせるとこんなに短く端的にはまとまりません。編集の岩田さんには本当に感謝しています。)
 その特徴は,地方政府の政策選択について,これまで保革の対立のような党派的な対立により力点を置いた分析が行われてきたのに対して,首長と地方議会の二元代表の部門間対立に注目したものです。首長と地方議会が,常に潜在的な対立を抱え,選挙における支持を通じた両者の関係と以前からの決定の一貫性という制約を受けながら地方政府の政策選択を行っていくために,地方議会が基本的に「現状維持点」を志向する存在になる一方で,強い権限を持つ首長が交代することで,地方政府の政策に変化が生まれていく様子を分析しています。
 このような分析は,規範的に地方議会はどうあるべきだ,という議論とは異なって,実証的に地方議会が制度から予測された機能を果たしているのだということを示すものになっています。終章で特に論じていますが,そのような実証分析をふまえた上で,「現状維持点」を志向する地方議会と,多くの場合は地方議会と同じような志向を持つ首長,そして地方政府レベルの政権交代によってある種突然に政策選択に影響を与える新しい首長が配置される日本の地方政府の民主主義の特徴と,中央地方関係の変化をふまえた上での今後の変化の可能性について議論を行おうとしたものになっています。
統一地方選挙雑感の中で,オワコンだと書いたのは,まさにこのような状況なのですが。)

http://d.hatena.ne.jp/sunaharay/20120415