- 作者: 長谷部恭男,杉田敦
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/11
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『これが「長谷部」憲法だ!』 2007/6/9
今、話題のクールな「長谷部憲法学」の入門書。憲法についての本としては、コンパクトで通勤電車の中でも軽く読め、また、読んでおもしろく、かつ、ためになるという珍しい本。対談形式のため難しい議論でも割と判りやすくなっています。
某新聞の読書欄の本書の書評で、川出良枝さんの「長谷部憲法学の論理は緻密かつ堅固で、安易な反論を許すものではない」という些か挑発的な記述があったのが気になっていて、この小さな本を購入しましたが、対談の相方である杉田さんのあの調子からしても、本当にそうだと思います。
おもしろいと思った箇所としては「解釈は『芸』であり、条文の字面通り読んで話が済むくらいなら憲法学者のような専門家などいらない」というくだりで、全く同感。専門家には上手な解釈芸を望みたいものです。
そうかなあ、と思う箇所としては「憲法改正など、労多くして益少ないのだから止めたほうが良い」というくだりですが、確かに労は多いでしょう。でも、国民投票法が成立した今となっては、主権者として、この際、山室信一さんが某新聞紙上で言われるように「私擬憲法」、私ならこういう条文が欲しい、というものを起草してみるという提案の方が前向きな態度として重要ではないでしょうか。
唐突でよく分からなかった箇所としては、冒頭、立憲主義を「価値観、世界観の多元性を前提にした上で、その間の公平な共存をはかるための手立て」と定義されているくだりで、この定義だとLiberalismに近い感じを受けます。語(Constitutionalism)の訳語である「立憲主義」という日本語から、やや離れているのではないでしょうか。
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4022731141/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1
以前、上記のとおり Amazon のレビューに長谷部恭男さんの『これが憲法だ!』について書き込んだことがあるのですが、そのうち「唐突でよくわからなかった」点について、本日、遅まきながらジュリスト(5月1-15日号)の座談会「グローバル化する世界の法と政治 ―― ローカル・ノレッジとコスモポリタニズム」(2009.1.29 収録)を読んで少し分かったような気がしました。
http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/017892
どうも長谷部さんのいう「立憲主義」というのは「リベラルデモクラシー」と(ひょっとしたらリベラリズムとも)同義のようです。この座談会で次のようにおっしゃっていましたので。
この世の中にいろいろな生活様式があって多元的な価値観、世界観があるということを前提にする限りでは、その公平な共存を保とうとすると、多様な生活様式なり生き方なり考え方なりをもつ人々に共通する利益をどうやって実現していくかという「公」の問題と、それぞれの人の人生にとって何が一番大事かという「私」の問題とを切り分けていくのは、必要なことではないかと私自身は思っているのです。
この問題はいままでのいろいろな問題とも重なっている話であって、それを立憲主義というか、リベラルデモクラシーというかはわかりませんが、そういったものは本当にどの程度の普遍性が標榜できるのか。
ここは一番、岩波講座憲法の第1巻『立憲主義の哲学的問題地平』とか岩波講座哲学の第10巻『社会/公共性の哲学』を読んで「立憲主義」「公と私」についてじっくりと学習する必要がありそうです。
- 作者: 毛利 透,愛敬 浩二,渡辺 康行,瀧川 裕英,駒村 圭吾,巻 美矢紀,吉永 圭,淺野 博宣,大屋 雄裕,井上達夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/04/20
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- 作者: 長谷部恭男
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2000/01/01
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- 作者: 『論座』編集部
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/04
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http://plato.stanford.edu/entries/constitutionalism/
それにしてもこの長谷部さん、鋭い方ですね。この座談の中だけでも思わずハッとさせられた発言が何箇所かありました。以下、備忘メモ的に。
「伝統的な公法学の区別では、中央政府がやっているのは統治で、つまりガバメントであったりポリティクスであったりするけれども、地方公共団体がやっているのはアドミニストレーション、行政である。だから地方議会というのは行政をいかに遂行するかを決める議会である。」
「フランスはいまでも地方公共団体について憲法で自由な行政、つまりリーブル・アドミニストラシオンが保障されている(§34④、§72③)。これは、保障されているのは統治、つまりグーベルヌマンではないという含意があると思います。」
「ダブルスタンダードにいかに慣れていくかというのが、これからの日本の公法学の課題ではないかと思います。1つの原則で地球全体と付き合っていくわけにはいかない(以下の文献を参照。著者 Robert Cooper 氏はピアニスト内田光子さんの御主人です)。」
The Breaking of Nations: Order and Chaos in the Twenty-First Century
- 作者: Robert Cooper
- 出版社/メーカー: Atlantic Books
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A diplomat in the real world
http://www.telegraph.co.uk/culture/books/3606609/A-diplomat-in-the-real-world.html
もっと驚かされたのは、薄い本ですが『 Interactive 憲法』という法学部生の副読本で、そこで引用されている文学、哲学などの参照文献の幅広さは尋常ではありません。この方、並みの法律学者の読書量ではないようです。ということで、憲法という学問の奥深さ、難しさ、というものが感じられる本だと思い、現在、味読しております。
- 作者: 長谷部恭男
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2006/09/01
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4月号「法の支配」
5月号「基本権条項の私人間効力」
6月号「学説の誤解」
7月号「訴訟と非訟」
8月号「立法者の基本権内容形成義務とベースライン論」
9月号「教科書の読み方」