早春スケッチブック

早春スケッチブック DVD-BOX

早春スケッチブック DVD-BOX

7日に録音した山田太一さんのラジオ日本のトーク番組をここのところ何度も聴いていたので、この際、『早春スケッチブック』を是非読んでみたいと思い立ち、図書館で「山田太一作品集」の第15巻を借りて来ました。考えてみれば当たり前のことですが、これはシナリオなんですね。こういうカタチで読むとどうしても映像で観たくなってしまいます。ということで、高価でしたが、思い切ってDVDを Amazon に注文しました。
http://www.tvdrama-db.com/content/select/sousyun/index.htm
思えば、私にとって 1983年 というのは特別な年です。その当時の山田太一脚本のドラマはかなり観ていたようなのですが、何故か、この番組は見逃してしまいました。1月から3月まで、全12回ですが、本当に残念でなりません(82年のクリスマス前後だったか、好意をもった女性に声を掛け、その後、舞い上がってしまってTVを観る余裕もなかったのでしょうか?)。
今、この名作を観直すことで(もっとも初めて観る訳ですが)、できればもう一度戻りたいような、輝いていて素晴らしかったあの頃のことを思い出してしまいそうです。結局は、未熟さゆえに失敗してしまった当時の自分に足りなかったもの、それは「自信」(まだ若かったし、自分は何程の人間なのか、いまいち自信がなかったような)なのか、あるいは「突破力」(あの恋に自分から降りたような、結局、逃げてしまったような)だったのか、改めて確認できるような気もします(足りないのは現在進行形なのかも知れませんが)。
http://www.tvdrama-db.com/content/yamada_taichi/taiti_ya.htm
ラジオで山田さんも「山崎さんと河原崎さん、両方とも素晴らしかった」とおっしゃっていましたが、特に、山崎努の演技には鬼気迫るものがあります。第1話の鋭い目付きでの登場シーンもそうですが、第3話では実の息子が「もう逢うべきではないと思う」と切り出すシーンで山崎は思わず涙を流します。涙が両目から二筋、流れるまま、洟までたらして、でも「あんたの言うとおりだ」という台詞は落ち着いて話すのですが、シナリオの上では涙を流す、となってはいません。私も涙まで流す場面ではないと思うのですが、役になりきった山崎が実の息子の言葉に思わず流してしまったのでしょう。山崎がここまで入魂の演技を見せたことに他の役者が感化されなかったはずはありません。このドラマの撮影現場に、特に役者の演技には緊張感が漂っていたのではないでしょうか。