どうせ買うなら

今年は「借り暮らし」のライフスタイルを実践すべく、休日はせっせと公共図書館に出掛けては借りられるだけの本を借り出して自宅の本棚に並べてきました。
そんなに繰り返し借りるような本で今でも買えるものなら、いっそ入手して常時手元に置けばよいのにと思わないこともないのですが、これまでのパターンとして、いざ買ってしまうと、いつでも読めると思うからでしょうか、何故か読まなくなってしまう性格のようです。
よって、どうせ買うなら、とても公共図書館には並ばないような本にしよう、と思って以下、Amazon に注文しました。

Freedom

Freedom

500頁を優に超える大作。なのにこのお値段(1,777円)でペーパーバック(1,645円)と100円ちょっとしか違わないというお買い得感がありました。
それと Amazon の読者レビューで「トルストイの「戦争と平和」の現代米国版という見方もできる。細かい字で600ページ近い長編だが、1行として無駄を感じなかった。近年で最も読み応えを感じた1冊である」(2010.9.6 渡辺由佳里さん)とあったのも購入する動機になりました。毎日少しづつ、楽しんで読むことにします。
(小説のプロットを含む渡辺さんのレビューは以下のとおり。参考になりました)

 Patty、Walter、Richard の3人は大学時代に知り合う。バスケットボールの花形選手で競争心が強いのに自己評価が低い Patty、Patty に惚れ込む善良な Walter、Walter の善良さを愛する親友のくせに彼が好きになった女の子に手を出しては捨てるロックミュージシャンの Richard。愛情と競争心で繋がる3人の複雑な関係は、Patty と Walter が結婚した後もくすぶり続けている。
 人生の半ばでそれぞれが問題を抱え、怒りや鬱を感じているときに、この関係のバランスが崩れ、互いを深く傷つける出来事に発展する。
 ある中流家族をめぐる親子関係、愛情の三角関係、家族崩壊、贖罪、というテーマは、よくある商業作品と変わらない。しかし、フランゼンの作品が一線を画すのは、ありきたりなテーマを扱いつつも、現代アメリカを見事に描いているところである。Walter、Patty、Richard の人生を通して、現代アメリカ合衆国の社会経済的構造、政治的対立、民主主義の矛盾を描くこの作品は、文中で Patty が読むトルストイの「戦争と平和」の現代米国版という見方もできる。
 意外だったのは、エンディングだ。これまでのフランゼンの作品とは異なり、人間の弱さ、愚かさ、失敗などを許し、どんな人間にでも潜んでいる「Goodness(善良さ)」を、あざ笑わずに信じさせてくれる。最後の20ページは涙で字が読めなかったほどだ。
 細かい字で600ページ近い長編だが、1行として無駄を感じなかった。
 近年で最も読み応えを感じた1冊である。

http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2010/09/feedom-by-franzen-2.html

https://youshofanclub.com/2010/09/06/feedom-by-franzen-2/
So long, Lalitha
http://www.lrb.co.uk/v32/n19/james-lever/so-long-lalitha
All the elements of the Great American Novel
http://www.guardian.co.uk/books/2011/sep/01/freedom-jonathan-franzen-review
Jonathan Franzen's book Freedom suffers UK recall
http://www.theguardian.com/books/2010/oct/01/jonathan-franzen-freedom-uk-recall
After the Show with Jonathan Franzen and Freedom
http://www.oprah.com/oprahshow/After-the-Show-with-Jonathan-Franzen-and-Freedom-Video
Jonathan Franzen, The Art of Fiction
https://www.theparisreview.org/interviews/6054/jonathan-franzen-the-art-of-fiction-no-207-jonathan-franzen

政権

政権

昨年夏の総選挙の前後、日経紙上に連載されていて、当時よく目を通していた記事をまとめた本が刊行されていることを先週月曜日の夕刊で知ったのですが、程なく11月17日付けの後房雄さんのブログにも「民主党政権のこれまでを振り返るうえでいい本」という読後感が載っているのを見て、原則(どうせ買うなら、とても公共図書館には並ばないような本)には反するのですが、この1週間、頭の中から離れなかった、ということで購入することにしました。これも500頁を超える本です。
以前、『官僚』という同じ日経の記事をまとめた本がありましたが(1994.7刊。450頁)、これとセットで山口二郎さんの2冊(『政治改革』(1993.5刊)と『政権交代論』(2009.3刊))と並べてみると案外おもしろいかもしれません。
時代的に重なるからなのですが「失われた20年」と言われるように、日本という国が揺らぎ自信をなくしてしまった原因の一つにこの政治改革の議論に国全体がかまけすぎてしまったことがあったのではないか、という気がしてならないのです。その議論の内容には全く同感、だったとはいえ、何というのか、議論ばかりしていて実体が伴ってこなかった、それが日本という国の不幸の始まりだったのではないか。この約20年間の政治改革、政権交代を巡る論議が失敗だったと断じた金井利之教授の文章を読んで以来、どうもそんな気がしてならないのです。