政治学は何の役に立つ?

政治学 (ヒューマニティーズ)

政治学 (ヒューマニティーズ)

苅部さんの新著が先月、出ていたことに本日、気付きましたが、この本、随分以前に出版予告されていたものであることを思い出しました。その折、岩波の「新刊案内」で本屋さんに注文したものの出版延期のため取り消された覚えがあります。

目次


はじめに――この本の使用上の注意

1 日常性と政治――政治学は「役に立つ」のか
 (1) アニマル・ファーム再訪
 (2) 日常のなかの権力――N・Nの例
 (3) 大政治と小政治

2 政治の空間――政治学のこれまで
 (1) 「堕落」と「礼儀」
 (2) 政治の原像と都市
 (3) 「日本」そして「現代」

3 権力と自由――政治学のこれから
 (1) サイゴン司馬遼太郎
 (2) 自由の根源にあるもの
 (3) 権力と自由

4 政治的リアリズムとは何か――戦後日本の論争から
 (1) 政治と演技
 (2) 偽善のすすめ
 (3) 政治の技術(アート)と嘘

5 政治学を学ぶために――読んでおきたい本

おわりに

http://www.iwanami.co.jp/shinkan/index.html

ふーん、第1章の副題は「政治学は「役に立つ」のか」ですか。
最近、同様の入門書である共著『政治学をつかむ』について苅部さん御自身が、PR誌「書斎の窓」の「『政治学をつかむ』の余白に」(2011.11)の冒頭で、高畠通敏『政治学への道案内』のまえがき「政治学は何の役に立つ?」を引いておられた箇所を懐かしく読んだばかりです。

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

この共著は、入門とはいえ「さしあたりこの現代に直結する19・20世紀に、政治はどのように変化してきたか、そして現代はいかなるもので、このあと21世紀中にはどんな問題が重要になるか。そうした視点を柱にして話題を選びだし」た「300年の政治学」であったのに対して、新著はさらに一般向けのテキストのようです。
「すべてを自分の文章で通して読者をおもしろがらせる技量がない」と謙遜され「他人による議論の紹介ばかりで著者本人の考えが見あたらない」とおっしゃってはいますが、何といっても単著ですし、司馬遼太郎など「さまざまな人々の文章を引用し、くみあわせて各章を構成する作業が楽しかった」ということですので、かなり苅部さん御自身の「地」も出ていると見ました。そういえば山崎正和さんが苅部さんを「対比列伝の名手」とおっしゃっていましたね。
これは買い、でしょう。早速 Amazon に注文いたしました。
政治学をつかむ (テキストブックス[つかむ])

政治学をつかむ (テキストブックス[つかむ])

目次


第1章 政治とは何か
 unit 1 権力と自由(宇野重規
 unit 2 国家・集団・個人(宇野)
 unit 3 法と政治(苅部直
 unit 4 政治と非政治(苅部)
第2章 デモクラシー──来歴とその敵
 unit 5 デモクラシーの思想(宇野)
 unit 6 リベラル・デモクラシーの発展(小川有美)
 unit 7 福祉国家の諸問題(小川)
 unit 8 非民主的体制(竹中千春)
 unit 9 政治教育(宇野)
第3章 日本の政治のいま
 unit 10 日本の政党政治(苅部)
 unit 11 政治家と官僚(森裕城)
 unit 12 政治参加と選挙(森)
 unit 13 マス・メディアと政治(森)
 unit 14 世界の中の日本(宮城大蔵)
 unit 15 戦後日本の政治学(苅部)
第4章 国際秩序と正義
 unit 16 主権と国際制度(中本義彦)
 unit 17 ナショナリズム(中本)
 unit 18 テクノロジーの奇襲(中本)
 unit 19 デモクラティック・ピース?(中本)
 unit 20 人権と介入(中本)
第5章 政治のこれから
 unit 21 グローバリゼーションの中のアメリカ(大津留〈北川〉智恵子)
 unit 22 移民問題を通してのEU(柄谷利恵子)
 unit 23 戦争責任問題韓国(川島真)
 unit 24 アジアの地域主義(宮城)
 unit 25 環境問題と政治(城山英明)
 unit 26 ジェンダーの政治(竹中)

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641177154

(関連)

政治を生きる――歴史と現代の透視図 (中公叢書)

政治を生きる――歴史と現代の透視図 (中公叢書)

http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20120528-OYT8T00916.htm