すみだ川

荷風全集〈第6巻〉歓楽・すみだ川

荷風全集〈第6巻〉歓楽・すみだ川

永井荷風「すみだ川」 全10回
朗読:若松泰弘(文学座
テキスト:「すみだ川」 『荷風全集 第五巻』(岩波書店 1964年)
     「春のおとずれ」『荷風全集 第四巻』(岩波書店 1964年)

永井荷風の作品が表現するいくつものテーマの一つは、江戸への共感、郷愁である。アメリカ、フランスにおよそ5年滞在し、「あめりか物語」、「ふらんす物語」を著した荷風は、この外遊により、西洋の精神・思想を吸収した。同時に、西洋と日本の季節、風土、伝統の違いを実感し、より日本的なるもの、わけても、中学のころより親しんできた江戸への思いを強くする。帰国してすぐ、江戸への追憶、郷愁の思いにあふれた「すみだ川」を書いている。帰国1年後の1909年、荷風32歳の時である。 「生れた過去の東京を再現させようと思って、人物と背景とを隅田川の両岸に配した」(荷風)。 平成17年に制作された映画「ALWAYS三丁目の夕日」が、過ぎ去った昭和をなつかしむ物語ならば、およそ100年前に書かれたこの作品は、江戸の面影を色濃く残す隅田川界隈を舞台に、そこに住み、昔からの暮らしを守る人たちに共感し、消えてゆく景色と時代をなつかしむ物語である。 今回は、小説「すみだ川」と、小品「春のおとずれ」を朗読する。

http://www.nhk.or.jp/r2bunka/roudoku/1502.html