故郷七十年

柳田国男の故郷七十年
全25回
朗読 : 小久保 丈二
テキスト:「柳田国男の故郷七十年」(PHP研究所・2014年9月5日第1版第1刷発行)
http://www4.nhk.or.jp/roudoku/315/
日本民俗学を確立し、日本各地での聞き取りをもとに習俗や言い伝えを記録した柳田国男は、「後狩詞記」「遠野物語」「海南小記」「山の人生」「海上の道」など郷土研究の成果を多くの著作に著した。「遠野物語」は東日本大震災時に三陸津波の記述が再び引用され今も輝きを失わない。柳田国男は、晩年に自分の生い立ちから学問遍歴と民俗学への動機を語り「故郷七十年」にまとめている。明治、大正、昭和にわたる日本の地域の歴史、日本人のものの考え方、柳田国男の考えのもとを記した「故郷七十年」を朗読する。「故郷を離れたころ」「母の思い出に」や布川時代の「ある神秘な暗示」など感受性の原点がつづられた自伝的エッセイである。

昭和33年、神戸新聞に連載された「故郷七十年」は柳田国男の80歳を超えてからの回顧談で、故郷、兵庫県神東郡田原村辻川(現兵庫県神崎郡福崎町西田原字辻川)を離れてから70年余の道のりが語られる。生家、母への思い、親族のこと、利根川のほとりでの思春期のころ、東京への旅や印象、若き時代の文学の思い出、森鷗外の家に出入りしたこと、田山花袋尾崎紅葉島崎藤村らとの交友、民俗学に取り組んだ各地での聞き取りの経験が豊富に述べられている。「故郷七十年」からは柳田国男民俗学への道のりが日本人の暮らし、歴史とともによみがえる。

柳田国男
明治8年(1875年)7月31日兵庫県神東郡田原村辻川に生まれる。東京帝国大学法科大学卒業。 農商務省に勤務。明治34年(1901年)柳田直平の養子となる。法制局参事官,貴族院書記官長を歴任後、官界を去り,晩年まで民俗学を中心とする研究に従事。幼少年期から詩文をよくし,博覧強記であった。田山花袋島崎藤村らと交わり自然主義文学にも関心をもったが,明治42年(1909年)の『後狩詞記』後,次々と民俗学研究における業績を上げ,また研究者の組織化と指導に努めた。「遠野物語」「海南小記」「海上の道」など。昭和37年(1962年)8月8日没(88歳)