井筒俊彦 『意識と本質』

「意識と本質 ― 東洋哲学の共時的構造化のために ―」と題して、岩波の高級誌「思想」1980年6月号から1982年2月号にかけ不定期に8回にわたって連載された論文をまとめた本書は、世上、非常に難解と評判ですが、その割に岩波文庫の中ではかなりよく読まれて(売れて)いる、という不思議な本です。
日本人の知的虚栄心を満たすのにこれ以上の書物はないかもしれないと(勿論、私も含めての話ですが)思ったりもします。

意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

この「思想」の総目次で調べてみたのですが、井筒さんには他に「東洋哲学のために」と題する6回の連載(1985.7〜1988.8)もありました。やはりイスラム関連が多いようですが、その中で私は「東西の哲学」という対談(1978.1。相方は今道友信さん)、デリダ等をめぐる「構造主義を超えて」という特集号の中での「書く」(1984.4)、「意味分節理論と空海真言密教言語哲学的可能性を探る ― 」(1985.2)などに興味を覚えます。東洋哲学という未知な世界に、ちょっと眼を向けてみようかな、などと思ってしまいました。
さて、井筒さんの語学力の凄さについては、以前、雑誌「中央公論」紙上で司馬遼太郎さんとの対談を読んで驚いたことがあるのですが、その井筒さんの師匠筋にあたる西脇順三郎さんの語学力、特にその英語力については、西脇さんの経歴からして、さぞや、と思っていたのですが、今日、何気に斎藤兆史さんの『英語達人列伝』を眺めていて、この達人十人衆のお一人に叙されているのを知って、やっぱり、と感心したところです。
英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)

英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)