朗読 坊っちやん

最近、NHKラジオで『吾輩は猫である』の第10、第11の抜粋を近石真介さんの朗読で聴いて、また、この近石さんの朗読が良かったこともあって、あらためて漱石のおもしろさを認識しました。
http://d.hatena.ne.jp/yasu-san/20160409
http://www.asahi.com/special/soseki/
朝日で半藤さんが以下のとおり御指摘になっているとおりです。

 「猫」は途中から明らかにトーンが変わります。はじめは猫の目から人間社会を見ていたが、視点が人間に移る。猫の目では社会批評はできても、文明批評は無理だからでしょうね。

 後半、とくに最終章の11章は、意識して文明批評の大議論を展開した。どんどん出世主義、拝金主義、享楽主義に向かう日本の国は、これからどっちへ行くのか、彼なりの憂国の情であり、自らを省みないで、いい調子になっていく世の中に、警鐘をならしたといえる。

 「猫」は、日露戦争後の悪くなっていく日本、国家がリアリズムを失っていく様子がよく書けている。現代の日本社会もそうなってはいないか。100年後の今、「猫」を読む意味はここにあるのではないでしょうか。

http://www.asahi.com/articles/ASJ3Y6SR4J3YUCLV00Z.html

直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ヴィジュアル版 6V)

直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ヴィジュアル版 6V)

半藤さんが「『坊っちやん』も『草枕』もそれぞれ文体が違う。」と言うので、ならば朗読CDがあれば、この、出た端に出張先の本屋で買い求めたテキストで、一遍読んでみたくなりました。
坊っちゃん 上巻 [新潮CD]

坊っちゃん 上巻 [新潮CD]

やっぱり、探せばあるもんですね。『草枕』もあるようで結構です。一昨年の5月12日の朝日のコラム「ひと」で、この漱石全集を編集した秋山豊さんが「『坊っちやん』で漱石はまがお(真面)と書いているのに編集者がまじめ(真面目)にした」と語っていたことを、今回、直筆原稿で確認できる訳ですから、これは楽しみです。