私の1冊 『福翁自伝』


NHKの新番組 「私の1冊 日本の100冊」。
10月27日(月)から来年3月末まで、毎朝10分間、100回にわたって放送。毎週土曜日の朝、その週の総集編が放送されるということですから、これなら何とか全回分を観ることができそうです。
各自が「私の1冊」を、100人が紹介するから「日本の100冊」。「日本の」というから本は日本人の著者に限られるのか、あるいは紹介する人が日本人だから「日本の100冊」なのかは不明ですが、今から非常に楽しみです。
これに先立ち、本日午前10時から、特集番組「私の1冊 日本の100冊 スペシャル」があります。ゲストの一人に、私のご贔屓の国生さゆりさんが出演されますので、これは絶対に観ようと思っています。彼女の「1冊」がどんな本なのか非常に興味があります。
なお、NHKのHPによる本番組のみどころは以下のとおり。

番組では、本好きの有名・著名人が“わたしのお薦めの1冊”を持ってスタジオに登場。読んだ契機や状況、受けた影響など、具体的なエピソードも交えて、その魅力を語りつくす。「あなたにも読んで欲しい」という思いを込め、熱いトークが展開する。
一方、普段は本を読まないという人に、“わたしの1冊”を決めてもらうまでのドキュメントも敢行。初めての書店巡りなど、本の魅力に目覚めるまでを密着リポートする。
また、日本一の蔵書を誇る国立国会図書館の潜入レポートや、ベストセラー作家の本棚拝見など、知られざる魅力にあふれた企画も盛りだくさん。
活字離れがさけばれる中、本に興味を失いつつある現代人も、この番組を見ると思わず、本を読みたくなり、わたしの1冊を探したくなる。

http://www.nhk.or.jp/book100/

ふむふむ、国生さんは人間の「悪」の側面を再認識させられた、ということで『不夜城』ですか。
これが映画化された時、相手役が金城武だったこともあって、ヒロインを演じるのは絶対、私しかいない、と思ったものの、英語ができないので残念だが諦めた、という国生さんの話はリアルで大変おもしろかったです。また、先輩の名取裕子女史に勧められて本を読む習慣が身につく以前は「私も5行くらいしか読めませんでした(上の写真)」とカメラに向かって話していた彼女は本当に微笑ましく、ますます彼女に興味を引かれてしまいました。国生さん、貴女は女優というより、その素顔というか、ユニークなキャラで、今後、さらに大成されるのではないでしょうか。期待してますから頑張ってネ!

児玉清さんの1冊は佐貫亦男『不安定からの発想』。ライト兄弟がなぜ最初に空を飛べたのかの分析から話は始まって、もともと「不安定」な空中において過度の「安定」を求めたら墜落の原因になってしまう、「不安定」な世界では自分で勇気をもって操縦していくしかない、人は一旦「安定」を掴んでしまうとそれを手離せなくなってしまう、というようなことを教えられたと話されていましたが、流石だなあと感心しました。司会者もいい話が聞けたと喜んでいましたが同感です。なお 「100冊」ということですが、雑誌「諸君!」1979年7月号で、鶴見俊輔さんが司馬遼太郎さんとの対談「敗戦体験から遺すべきもの」の中で以下のように「本なんかは100冊ぐらい持っていれば十分だ。ゆっくりと何回も同じ本を読めばいい」と言われています。極端に読書量の少ない私には、100冊で十分と言われると非常に希望が持てるというところでしょうか。

渡部昇一氏の『文科の時代』という本の中に、教養は愉しみのためという言葉があるんです。私、それには感心するんだ。いまはみんなが70歳ぐらいまで生きるでしょう。年寄になった時のために、安い愉しみをいろいろ考えるべきなんですね。本なんかは100冊ぐらい持っていれば十分だ。ゆっくりと何回も同じ本を読めばいいんですよ。

ところで、この私自身の1冊は、といったら一体どの本を挙げることになるでしょうか。著者が日本人、ということに限定すれば、漱石の『坊っちやん』(番組で関川夏央氏も挙げてみえました。ここで挙げるのは漱石の作品で私がまともに読んだのはこれだけ、という意味で…)か『石光真清の手記』(昔、木下順二さんがNHKのラジオ講演会で薦めてみえたのを聴いた記憶があります。これは中公文庫版で大学卒業間際にかろうじて読み了えました…)でしょうか。
やっぱり 『福翁自伝』です。
大学入学間もない時期に読んで、近代日本の幕開けの時期にこんなユニークな日本人が居た、ということに感心してこれを座右の書にしようと思った本です。私が購入して読んだのは講談社文庫版。座右の書といいながら、実は今、これは手元にありません。岩波の福澤全集の該当巻が書棚に並んでいます。いつか伏字の箇所を起こしたのではないかと思われる角川文庫版も見てみたいと思っています。

特に咸臨丸でアメリカに渡った時のエピソードが印象深いので、その意味でアメリカの少女と一緒に収まっているこの写真が付いている版がよいと思います(岩波文庫版)。
 
福澤諭吉アメリカの少女テオドーラ・アリス。1860年、サンフランシスコにて。(慶應義塾福澤研究センター所蔵)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E6%BE%A4%E8%AB%AD%E5%90%89