苅部直 『丸山眞男』

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

Maruyama Masao and the Fate of Liberalism in Twentieth-Century Japan 『丸山眞男??リベラリストの肖像』の英語版 (長銀国際ライブラリー叢書)

Maruyama Masao and the Fate of Liberalism in Twentieth-Century Japan 『丸山眞男??リベラリストの肖像』の英語版 (長銀国際ライブラリー叢書)

以前からこの本の評判は「みすず」の読書アンケート等で知っており、いつか読みたいと思っていました。
通勤電車中の読書タイムのみで2週間もかかってしまいましたが(実質10日かな)、そんなものでしょう。
現代の高校生や大学生にはどうなのか分かりませんが、私と同世代で「丸山眞男」その人の名前を知らずに学生生活を送った人間は少ないと思われます。
では学生時代に私自身、丸山さんをどの程度身を入れて読んだか、と問われれば、高校3年時の受験勉強で、夏のNHKラジオでの受験講座のテキストに載っていたイタリア映画「ロベレ将軍」を引きながら「あの時に何もしなかったことが罪なのだ」と不作為の罪について語っていた文章(『日本の思想』中の文章の一部)とか、土曜日の学校帰りに立ち寄った図書館の自習室で雑誌「図書」に載っていた古典を読むことについて語った「ある読書会開講のあいさつ」を読んだこと(ほとんど内容を忘れていたところ『文明論之概略を読む』の冒頭に再録されているのを見て懐かしかった)くらいが記憶に残っている、ということぐらいしかない有様だということを正直に白状しなければなりません。竹内好さんと同様、著作の多くを手にしたはずなんですが、情けないですね。
さて、この本ですが、新書という一般に手に取り易いコンパクトなカタチには不釣合いなくらい中味が濃いです。著者の苅部直さんの材料(現在、丸山さんの著作や座談、手紙の類まで、そのほとんどが出版されています)の見事な捌きに感服。流石は丸山さんから数えて3代目(?)の日本政治思想史講座の継承者だと思いました。本当にすごい本です。
今回、終章に紹介されていた丸山さんの「友を求める人たちに」という1960年の文章を是非、その全体を読んでみたいと思いました。
なお、5日にちくさ正文館書店で購入したのは2006年10月刊の第4刷。第3刷にあたって117頁の写真解説を訂正した旨の付記があります。
因みに訂正前は東京大学法学部での演習風景が「1950年」で、読んでいる外書は「ジェルジ・ルカーチ『歴史と階級意識』のドイツ語原書」となっておりました。ここに写っている当時のゼミ生から指摘があったのでしょう。
後になって、この写真が岩波『丸山眞男集』の内容見本に載っていることを発見しました。内容見本でも1950年のゼミナール、とありました。

苅部直さんの書評リスト(朝日新聞
http://book.asahi.com/review/karube.html
 変革への関心と認識楽しむ構え
http://book.asahi.com/review/TKY200906020100.html

丸山眞男話文集 1

丸山眞男話文集 1

http://www.msz.co.jp/book/detail/07381.html
 鍵は他者の声を聴きとる「感性」に
http://book.asahi.com/review/TKY200811040204.html
軍事力を用いる強靭な倫理を求める
http://book.asahi.com/review/TKY200807080153.html