山口二郎 『政権交代論』

政権交代論 (岩波新書)

政権交代論 (岩波新書)

本日読了しました。現実政治に深くコミットし続ける著者の「社会民主主義」に対する思い、貧困や格差が叫ばれる中で「社民」を対立軸に「新自由主義」との対決を通じていよいよ日本にも本格的な政権交代が起きる時が近づいている、という著者の見通し。何とか日本でも本格的な政権交代を成就させたい、という熱いメッセージが伝わってきました。
出版社のHPより、以下引用します。

 変える経験が政治を鍛える


 著者の言論活動の中心は、日本に政権交代をもたらすことにおかれてきました。そのことは、1993年に刊行された著者の最初の岩波新書、『政治改革』以来、一貫しています。6冊目にあたる今回の新書は、ずばり『政権交代論』。日本で政権交代を可能にする条件について考察しています。
 しかし、どうして政権交代が必要なのかについては、考えてみると、それほど自明なことではないようにも思います。また、政権交代そのものを自己目的化しないようにするためにも、その問いに答える必要があるでしょう。本書では、政権交代自由社会や民主政治に欠かせない理由について説き起こすところからスタートしています。
 また、本書では、オバマ政権を成立させたアメリカの劇的な政権交代についても検討を加えています。そこには日本も参考にするべきことがたくさんあるはずです。
 ちょうど本書が校了になった日に、小沢一郎民主党代表の公設秘書が逮捕されるという事件が起きました。「政権交代間近」といわれている中での事件に、政治情勢はいっそう流動化し、政治への幻滅や閉塞感も極まっています。本書では事件に直接触れてはいませんが、「生きにくい」閉塞した時代だからこそ民主主義の出番なのだ、という本書のメッセージは、政治との向き合い方を伝えてくれるはずです。         (新書編集部 小田野耕明)
■著者紹介
 山口二郎(やまぐち・じろう)氏は、1958年岡山市生まれ。東京大学法学部卒。現在は、北海道大学法学部教授。専攻は、行政学政治学
 著書に『大蔵官僚支配の終焉』 『一党支配体制の崩壊』 『危機の日本政治』 『ポスト戦後政治への対抗軸』(以上、岩波書店)、『政治改革』 『日本政治の課題』 『日本政治 再生の条件』(編著) 『戦後政治の崩壊』 『ブレア時代のイギリス』(以上、岩波新書)、『内閣制度』(東京大学出版会)、『若者のための政治マニュアル』(講談社現代新書)ほかがある。
■目次
序 章
 自民党政治の終焉
第1章
 なぜ政権交代が必要か
1 権力の暴走を防ぐ
2 国民の選択を実質化する
3 日本における政権交代
第2章
 アメリカの政権交代
1 二大政党の構図
2 保守革命の構造
3 オバマ旋風の政治的意義
第3章
 イギリスの政権交代
1 二大政党政治の実像
2 ブレア政治はイギリスをどう変えたか
第4章
 なぜ日本に政権交代がないのか
1 自民党政権はなぜかくも長続きしたか
2 改革の時代と自民党の危機
3 一九九三年の教訓―政権交代から誰が何を学んだか
4 小泉純一郎とは何だったか―自民党の中興の祖か、破壊者か
第5章
 民主党は政権を担えるか
1 民主党の歩み
2 民主党の政策的混迷
3 小沢民主党の課題と可能性
第6章
 政権交代で何を変えるのか
1 現代日本政治における憲政の常道
2 有意義な政治的対立軸
3 政権交代可能な政治システム
おわりに―これからの民主政治
あとがき

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0903/sin_k462.html

関連で後房雄さんの以下の本も、小沢一郎自民党を割って飛び出た時代の熱気が伝わると思い読んでみました。

政権交代のある民主主義―小沢一郎とイタリア共産党

政権交代のある民主主義―小沢一郎とイタリア共産党

それにしても、これまで山口さんの著作は節目節目で読んできたつもりです。
所在不明になってしまって、現在の私の書棚には並んでいませんが、やはり一番インパクトがあったのはこれです。政権交代論』の「あとがき」でも、20年前の本書について懐かしく振り返っておられます。
山口さんが1993年5月に『政治改革』を上梓された後、その年6月に宮澤内閣が不信任になり、7月の総選挙を経て非自民の細川内閣が誕生したわけです。
政治改革 (岩波新書)

政治改革 (岩波新書)

それから15年を経て、今回も2009年3月に『政権交代論』が出版されました。出版後、小沢一郎民主党代表の秘書が逮捕されるという思わぬ事態が発生し、迫る総選挙で民主党が単独で過半数を獲得するような一時期の勢いはなくなっているようです。
果たして1993年のように今回も政権交代が起きるのでしょうか。
起きるとしたら民主党が満を持した形での政権交代であって欲しい。これが私の希望する姿です。