コールドマウンテン

acorns8 さんの6月30日付けブログを見て、久し振りに本書のことを思い出しました。
http://ripples.blog.so-net.ne.jp/2009-06-30
私は新潮クレストブックス版と映画化を機に文庫化された版(上下)を持っていましたが、現在、文庫の下巻しか手元にありません。
文庫化のいきさつからして止むを得なかったのでしょうが、私はクレスト版の訳者あとがき(訳者は土屋政雄さん)にあった以下のエピソードが文庫版のそれから割愛されてしまったことが残念でなりません。

 本書の読者には、昨年夏、もう一つの楽しみができた。それは著者フレイジャーの協力も得て制作されたという一枚のCDである。
 コールドマウンテンが位置するノースカロライナ州西部山岳地帯(ブルーリッジ山脈の一部)は、ブルーグラス音楽の前身、オールドタイム音楽の本場だった。本書に登場するルビーの父親、スタブロッドというフィドル弾きは、そこで活躍していたオールドタイムミュージシャンの一典型である。
 翻訳をしながら、音楽のことはいつも頭にひっかかっていた。本書に名前の出てくる曲のなかで、「オーラ・リー」は知っていたし、「ロリーナ」はケン・バーンズのドキュメンタリーで紹介されていた。「さすらいの旅人」も、ジョーン・バエズの歌で聞いていた。だが、その他の曲、とくにスタブロッドの演奏する曲となると、いったいどんな曲なのか、皆目見当がつかなかった。そこへ発売されたのが“ Songs from the Mountain ”( Howdy Skies 1001 )というこのCDである。
 聞いてみると、「ボナパルトの退却」、「死して、われはふたたび生きん」、「バックステップ・シンディ」、「土中の土竜」、「美しいマーガレットと優しいウィリアム」、「天使の群れ」と、本書に名前の出てくる曲がいくつもある。「さすらいの旅人」もバエズの技巧的な歌い方とはずいぶん違って、素朴である。
 スタブロッドが登場する辺りからは、このCDをBGMとして聞きながら翻訳を進めた。文中に、「死者の調弦」というフィドルの特別なチューニング(このCDを紹介していたブルーグラス専門誌「ムーンシャイナー」によると、通常はEADGとするところをDADDとする)が出てくるが、このCDではそれを実際に聞くことができる。
 音楽好きの読者には、ぜひお勧めしたい。

私はこのあとがきを読んでこのCDを購入しました。

Songs from the Mountain

Songs from the Mountain

また、原書の表紙がまさしくコールドマウンテンのイメージ、ブルーリッジ山脈っぽかったのに惹かれて、これも購入してしまいました。2001年8月の話ですが、これも、今、手元にありません。
Cold Mountain: A Novel

Cold Mountain: A Novel