潤一郎ラビリンス

谷崎潤一郎作品集」全20回
朗読 : 藤田三保子(俳優)
テキスト :「人魚の嘆き・魔術師」(1978年)、「潤一郎ラビリンスXI 銀幕の彼方」(1999年/千葉俊二・編集)ともに中公文庫近代日本文学を代表する作家として「文豪」、「大谷崎」とも称された谷崎は、大正5年〜9年頃に数々の怪奇文学を発表、それは江戸川乱歩横溝正史に大きな影響を与えたと言われる。そして谷崎は怪奇文学を経て、より怪異な幻想世界を銀幕に求めた。今回は100年ほど前に頂上を極めた谷崎怪奇文学の中から耽美の極みとも評される代表作「人魚の嘆き」と「魔術師」、続いて谷崎の映画哲学が織り込まれた『潤一郎ラビリンスXI銀幕の彼方』より「青塚氏の話」を紹介し谷崎の怪奇幻想の世界を紹介する。

【人魚の嘆き・魔術師】
(1)「人魚の嘆き」(全6回) 大正6年(1917年)
財力・知力・美貌、すべてに恵まれた中国の貴公子が、人魚と出会い、その魔性に溺れて行く。幻想的な世界観の中に生々しい人間の欲情や怠惰、そして西洋人への憧れなどが織り込まれたファンタジー

(2)「魔術師」(全6回) 大正6年(1917年)
美貌の魔術師に魅せられて半羊神(ファウン)と化す男と、その無垢な恋人を描いた妖しく哀しいファンタジー

【潤一郎ラビリンス XI 銀幕の彼方】
(3)「青塚氏の話」(全8回) 大正15年(1926年)
妻であり女優の由良子を主演にした映画を制作する監督の中田が、ある時から日常の妻(実体)と銀幕の中の妻(影)に心を乱されていく。中田が愛する本物の由良子は実体なのか、影なのか。谷崎が銀幕に求めた、より怪異な幻想世界とその芸術性にも触れた作品。

谷崎潤一郎
明治19年1886年)、東京日本橋生まれ。第一高等学校を経て、東京帝国大学国文科に入学するも中退。明治43年には小山内薫などと第二次「新思潮」を創刊して、「刺青」、「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上では永井荷風に激賞され文壇的地位を確立する。また大正9年から一年半ほど大正活映(株)脚本部顧問に就任、「雛祭りの夜」や「蛇性の婬」などの映画制作にも携わった。「痴人の愛」、「卍(まんじ)」、「春琴抄」、「鍵」など豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩み続けた。昭和40年(1965年)79歳で死去。関東大震災後、長く移り住んだ兵庫県には、谷崎の行跡が偲ばれる「芦屋市谷崎潤一郎記念館」がある。
http://www4.nhk.or.jp/roudoku/315/